「だから、人間っていうのは、今あるもので満足できないのよ!」

息も荒く、切れ切れとした言葉でそいつは言った。

バンッと鳴り響いたのは、叩かれた机の音。
そいつが座っていたソファーは圧力から開放され、窪みは元に戻りつつあった。











突然立ち上がって、演説を始めたうるさい女。
…ブルーだ。


「だって、そうでしょう?
 次々と新しい物が生み出されていくのは、今あるものに満足できなくて、作り出されていく結果だからよ。
 もしくは、上を、上を目指して、そのときは上に見えていたものが、下に見えてしまうから、人はさらに上を求めるの。」


何が原因でこんな話を始めることになったか、オレは覚えていない。
何がこんなにこいつに熱弁を振るわせる結果になったのか、分からない。





―どうでもいい。

オレは座った姿勢のまま、向かいに立つあいつを、首は動かさずに目線だけで見上げた。
そんなオレの態度を見て、そいつはますます気分を害したようだった。






「もうっ!!だから、」
「じゃあ、お前は…」
オレの言葉が、そいつの言葉を遮る。

脳裏には、一つの考えが過っていた。

が。




…いや。

オレはそこで言葉を切った。




「何よ?」
そいつのふくれた面。
目を細めてこちらを見る。







…こんなことを考えるなんて、らしくねぇ。








オレは、フッと自嘲の笑みを漏らす。
あいつの言葉には返答しない。

立ち上がって、そのまま部屋を出て行くことにした。



「ちょ…ちょっとぉ!気持ち悪いわねー!!
 何って聞いてんでしょぉ〜?!」

バタン。
無視してドアを閉めた。

















ふぅ。

息を吐く。


そのドアに、もたれかかりながら…



「今あるものに満足しない…ってなら、
 お前…






 オレはどうなんだよ。」









らしくねぇ。



独り、呟いた。












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今あるものに満足しないなら、お前はオレに満足していないのか?




(2007.9.7)